ファクタリングは、事業を行う上で有用な資金調達手段であり、様々な分野で利用することが可能となっています。一見すると医療分野には関係がないように思われる方もいるかもしれませんが、実は医療報酬ファクタリングという方法を用いれば、病院やクリニックなどの医療機関が資金調達を行うことは可能なのです。ここでは、その用途と仕組みについて見ていきますので、ぜひ参考にしてください。
【医療報酬ファクタリングの用途】
まず、医療報酬ファクタリングというのは、医療報酬に係る債権を譲渡することによって入金を早期化するという資金調達方法です。
医療機関が患者の診断を行って得られる医療報酬は、本来であれば社保や国保に請求して、そこから支払われるまで待たなければなりません。
しかしながら、資金繰りが厳しい医療機関の中には、それまで待っていては資金がショートしてしまうおそれがあるというところも少なくないでしょう。
そんな場合は、医療報酬ファクタリングの手法を用いることで、医療報酬債権をファクタリング会社に譲渡する代わりに、その分の金額を入金してもらうことにより、早期に債権を回収できるようになるのです。
なお、介護サービスを提供している場合には、医療報酬と同様のスキームの介護報酬ファクタリングサービスが提供されていますので、それを利用することで介護報酬を早期に現金化できます。
【医療報酬ファクタリングの仕組み】
ここからは、医療報酬ファクタリングの仕組みについて、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
医療報酬ファクタリングを利用するためには、はじめにどのファクタリング会社を利用するかを決めなければなりません。一言でファクタリング会社と言っても数多くありますし、そのすべてが必ずしも医療報酬ファクタリングサービスを提供しているというわけでもありません。また、会社によってサービスの内容や料金体系も一律ではありませんので、まずはいくつかの会社のサービスを比較したうえで、もっとも自分たちのニーズに合うところを選ぶようにするとよいでしょう。
利用するファクタリング会社が決まったら、次に債権譲渡契約を締結することになります。これは、医療機関が保有している医療報酬の明細書をファクタリング会社に譲渡する旨を約束し、その対価として譲渡した医療報酬相当額の金銭の支払いを受けるという内容の契約書です。ファクタリングを利用する上で把握しておくべき条件が細かく記載されていますので、よく分からないからといって適当に読み飛ばすのではなく、しっかりと内容を精査した上で、自分たちに不利な条件になっていないかどうかをきちんと確認するようにしましょう。もし、契約書に不慣れで読んでもよく分からないということであれば、弁護士などの専門家にチェックしてもらうという方法も有用です。
債権譲渡契約を締結すると、それに基づいてファクタリング会社と連名で、社保や国保に対して債権譲渡通知を発出する必要があります。この通知を怠ると、債務者である社保や国保が誰に対して医療報酬を支払えばよいか分からなくなってしまい、後になって無用のトラブルを招いてしまいかねないため、くれぐれも通知し忘れないように注意しましょう。
通常は、ファクタリング会社の方で通知の手配をしてくれるので、基本的には指示に従って対応すれば問題ありません。ただし、その際は必ず通知書の譲渡人が正しい記載になっていることを確認するようにしてください。というのも、記載が間違っていると、有効な譲渡通知として扱われないおそれがあるからです。通知が終われば、ファクタリング会社から医療報酬相当額が支払われ、その後、社保や国保からファクタリング会社に医療報酬が支払われて一連の手続きは完了となります。
【医療報酬ファクタリングのメリット】
医療報酬ファクタリングを利用するメリットとしてまず挙げられるのは、通常であれば2か月強かかる医療報酬の入金を1ヶ月から1カ月半ほど短縮できるという点です。それによって資金繰りを安定させやすくなるので、財務面で不安のある医療機関にとっては非常に使い勝手の良いサービスであるといえるでしょう。
また、手数料が安いというのも医療報酬ファクタリングのメリットの一つです。医療報酬はよほどのことがない限りは社保や国保からの支払が滞ったりはしないため、他のファクタリングサービスに比べると医療報酬ファクタリングの手数料はリーズナブルな水準に設定されているケースがほとんどです。
【資金繰りに困った時は医療報酬ファクタリングを検討してみよう】
以上で見てきたように、資金繰りが厳しい医療機関にとって、医療報酬ファクタリングや介護報酬ファクタリングは早期に医療報酬や介護報酬に係る債権を現金化できる非常に使い勝手のよいサービスです。利用にあたって一定のコストは必要になってきますが、それを補って余りあるメリットが得られますので、もし手元のキャッシュが心もとないという場合はぜひ利用を検討してみるとよいでしょう。