ビジネス取引において、「与信調査」という言葉が使われることがあります。
この与信調査は、企業のリスク管理にとって非常に重要なものです。
しかしながら、与信調査とは具体的にどのようなもので、どのような方法で行われるのかを理解していない人も多いでしょう。
そこで、この記事では、与信調査とはどのような調査かについて、実施すべき理由と共に解説し、さらに与信調査の流れや方法、ポイントについても紹介します。
目次
【与信調査とは?具体的にどのようなことをするのか】
「与信調査」とは、特定の法人が商取引において信用できるかどうかを調査することです。
このため、与信調査は「信用調査」とも呼ばれます。
例えば、取引先に商品を先に渡し、代金は後払いとする場合、代金回収ができるかどうか、すなわち信用できる取引先かどうかが重要です。
企業間の取引は掛取引が主流であり、商品の受け渡し後に約束した期日に代金の決済を行うケースが少なくありません。
このため、売掛債権の発生による代金未回収を避けるためにも、信用できる取引先かどうかを調査することが重要です。
与信調査の主な調査方法には、取引先の企業に直接訪問する直接調査や、インターネットを利用して取引先企業の情報を調べる方法、信用調査会社への依頼などがあります。
次に、一般的な与信調査のプロセスについて説明します。
与信調査には主に3つのステップがあります。
最初に、本格的な与信調査に移る前に、自社で「社内調査」または「内部調査」と呼ばれる調査を行います。
過去に取引を行った場合、取引先に関する情報は既に社内にあるかもしれませんが、過去のデータだけでは情報が限定的であることがあります。
次に、インターネットを利用した調査を行います。
無料で入手できる情報だけでは十分な信用情報を得ることができない場合、有料情報の取得が必要になる場合もあります。
そして、最後に直接企業を訪問して調査を行います。
また、調査の進行状況に応じて、取引先だけでなく、同業他社からの情報収集や外部の信用調査会社への依頼も必要になることがあります。
【「焦げ付き」を防ぐためにも与信調査が重要】
「焦げ付き」とは、取引先が経営的に悪化し、代金回収が不可能になる状態を指します。
このような状況を回避するためには、与信調査が必要であり、重要なリスクコントロール手段です。
焦げ付きが起こると、損益面で大きな影響が出ます。
例えば、利益率が10%の取引で1千万円の焦げ付きがあった場合、その損失を取り戻すためには、新たに1億円の売上が必要になります。
また、決算にも影響し、業績が悪化する可能性があります。
さらに、資金面でも影響が出ます。
通常、企業は取引先からの入金を仕入れ先への支払いや経費の支払いに充てています。
しかし、1千万円の焦げ付きがあった場合、未収金となり、不足分を別の所から捻出する必要があります。
資金繰りが滞ると、仕入れ先への支払いが滞り、最悪の場合、自社も連鎖的に倒産することがあります。
このような事態を回避するためには、徹底した与信調査が必要です。
与信調査によってリスクを低減し、取引先の経営状態や信用情報を正確に把握することが重要です。
【与信調査の実施のために知っておきたいポイント】
与信調査を実施する際には、流れや手段を理解した後に、押さえておきたいポイントを知っておくことが重要です。
以下では、3つのポイントを紹介します。
1.収入が支払いに十分かどうか
良心的な取引先であっても、売掛金を支払える能力がなければ、ビジネスになりません。
売上収入が維持できるだけの能力があるかどうかを確認するためには、売上の推移、受注状況、資金の余裕などを確認する必要があります。
また、在庫に過剰な増減がないか、返品が多くないか、従業員の離職率や労働条件などの内部トラブルも重要な情報源です。
2.会社や経営者の信用度
経営者や社員の人柄がよい場合、ビジネスの取引においてもつながりを持ちやすくなります。
ただし、必ずしも人柄がよい人が金銭面でも誠実な対応ができるとは限りません。
感情や感覚で判断する定性データだけでなく、数値化された定量データを併せて判断することが重要です。
3.資産状況・財務の状態
資産や財務の状況を確認することも重要です。担保余力の有無や、未払いや税金滞納などで差し押さえされていないか、動産や債券の譲渡登記、貸し倒れなどが行われていないかなど、慎重に確認する必要があります。
これらのポイントを確認することで、取引先の信用度を判断することができます。
【与信調査を行いリスクへ対処しよう】
この記事では、与信調査について概要、流れ、方法、ポイントなどを説明しました。
事業を拡大するためには、新しい取引先を獲得することが重要ですが、売掛金を支払う能力が不十分な会社と取引することにはリスクが伴います。
そのため、十分な与信調査を行い、取引リスクを軽減し、未回収代金のリスクに対処できるようにすることが必要です。