医療費や介護費用は高額なため、保険に入っておくことが大切です。日本では、国民健康保険と社会保険という2つの健康保険制度があります。しかし、どちらに加入するか迷うこともあるでしょう。そこで、本記事では国民健康保険と社会保険の違いを解説し、どちらに加入するか迷っている人の参考になるようにしたいと思います。
目次
健康保険制度の種類について
健康保険制度には、国民健康保険、社会保険、厚生年金保険、国民年金保険などがあります。国民健康保険は、自営業者や農家などの国民が加入する保険制度であり、社会保険は、企業に勤めている人が加入する保険制度です。
国民健康保険の料金体系と支払い方法
国民健康保険の保険料は、年収に応じて決まります。
国民健康保険料は、世帯ごとに計算され、各年度(4月から翌年3月まで)の年間保険料額が求められます。保険料は、世帯内における国保加入者全員の医療分(基礎賦課分)、支援金分(後期高齢者支援金等分)、介護分(介護納付金分)を合算して計算されます(※介護分は40~64歳の加入者のみがかかります)。
まず、保険料の計算には「均等割額」と「所得割額」の2つの要素があります。それぞれの区分ごとに均等割額と所得割額が求められます。
以下は、東京都江東区における令和5年度の国民健康保険料率等を元にした表です。均等割額、所得割額、および年間限度額が示されています。
区分 | 均等割額(加入者全員) | 所得割額(加入者全員) | 年間限度額 |
---|---|---|---|
1. 医療分 | 加入者数×45,000円 | 加入者全員の年間所得額×7.17% | 65万円 |
2. 支援金分 | 加入者数×15,100円 | 加入者全員の年間所得額×2.42% | 22万円 |
3. 介護分 | 40~64歳の加入者数×16,200円 | 40~64歳の加入者の年間所得額×2.23% | 17万円 |
上記の表では、各区分ごとに均等割額と所得割額が示されており、年間限度額も設定されています。
均等割額は、加入者全員にかかる保険料を示します。ただし、所得に応じて減額される場合があります。
所得割額は、前年中の所得に対して計算される保険料です。年間所得額は、前年中の総所得金額等から基礎控除額を差し引いた金額となります。なお、所得控除(扶養控除・社会保険料控除・医療費控除など)は適用されず、退職所得は含まれません。総所得金額等には、事業(営業)、不動産、利子、配当、給与、短期譲渡、雑所得(年金を含む)などが含まれます。また、総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額の2分の1の金額、退職所得、山林所得、申告分離課税の所得(株や土地、家の売却益など)の特別控除前の金額も総所得金額等に含まれます。
保険料の所得割額を計算する際には、分離課税の特別控除後の所得金額を使用します。これにより、総所得金額等から基礎控除額を差し引いた金額が所得割額の計算に使用されます。ただし、保険料の計算時には、雑損失の繰越控除前の金額や分離課税の特別控除後の金額が考慮されます。
以上が国民健康保険料の計算方法の概要です。具体的な計算方法や年間保険料額は、令和5年度の保険料率に基づいて決定されます。保険料率は毎年変動するため、詳細な金額は年度ごとに確認する必要があります。
保険料の計算には、加入者数や年間所得額などの情報が必要です。また、加入者の年齢や特定の状況(介護の有無など)によっても保険料が異なる場合があります。
国民健康保険料の計算方法や年間保険料額は、一般的なガイドラインです。個々のケースによって異なる場合もあるため、具体的な金額や詳細な情報を知りたい場合は、所属する市町村の役所や国民健康保険組合にお問い合わせください。
社会保険の料金体系と支払い方法
社会保険の保険料は、企業に勤めている人の場合は会社が、自営業者の場合は個人が支払います。保険料は月額制で、年収に応じて決まります。
社会保険の料金体系と支払い方法について、以下に詳しく説明します。
まず、社会保険には、以下の4つの保険があります。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
これらの保険に加入している場合、保険料はそれぞれ月額で支払うことになります。また、保険料は年収に応じて決まります。具体的には、健康保険や厚生年金保険の保険料は、前年の年収をもとに決定されます。
健康保険の保険料は、前年の年収に応じて以下のようになります。
年収 | 保険料 |
---|---|
660万円以下 | 年収の4.85% |
660万円超 | 年収の5.95% |
厚生年金保険の保険料は、前年の年収に応じて以下のようになります。
年収 | 保険料 |
---|---|
660万円以下 | 年収の9.15% |
660万円超 | 年収の11.15% |
なお、社会保険の保険料は、会社によって異なる場合があります。自営業者の場合は、国民健康保険同様に市町村によって保険料が異なりますので、事前に確認しておくことが大切です。
支払い方法については、企業に勤めている場合は、会社が給与から天引きして納めます。一方、自営業者の場合は、保険料納付書を受け取り、自らが市町村役場や税務署などで支払います。また、口座振替などの支払い方法も選ぶことができます。
国民健康保険と社会保険の手続きの違いについて
加入手続き
国民健康保険に加入する場合は、市町村役場の保険課に申し込みます。一方、社会保険に加入する場合は、会社が手続きを行います。
保険料の支払い方法
国民健康保険の保険料は、毎月市町村に支払うことになります。社会保険の保険料は、会社によって異なりますが、多くは給与された給料から天引きされます。
保険証の取得方法
国民健康保険の保険証は、加入手続き後に市町村から送られてきます。一方、社会保険の場合は、会社から保険証を受け取ることができます。
国民健康保険と社会保険の保障内容の違い
国民健康保険と社会保険は、どちらも社会保険制度の一環であり、健康や生活に関わるリスクに対して保障を提供していますが、その内容には違いがあります。
まず、国民健康保険における保障内容については、医療費の補助や高額療養費制度の利用などが挙げられます。国民健康保険は、基本的には公的医療保険制度の一つであり、医療費の補助を受けることができます。また、高額な医療費が必要になった場合には、高額療養費制度を利用することで、一定額以上の医療費を補助してもらうことができます。
一方、社会保険における保障内容には、介護保険や労災保険などの特殊な保険制度があります。介護保険は、高齢者や障がい者に対して、介護サービスや介護用具の費用を補助する制度です。また、労災保険は、労働中や通勤中に発生した事故や疾病に対して、給与の補償や治療費の補助を受けることができます。
また、国民健康保険は、市区町村によって運営される自治体独自の医療保険であり、加入には居住地が条件となります。一方、社会保険は、企業や自営業者が加入する保険であり、加入には就業状況が条件となります。
以上のように、国民健康保険と社会保険は、保障内容や加入資格などに違いがあります。自分に合った保険に加入することで、健康や生活に関するリスクに対して適切な保障を受けることができます。
以下が国民健康保険と社会保険の主な違いです。
項目 | 国民健康保険 | 社会保険 |
---|---|---|
加入対象 | 一般的には国民すべてが対象 | 企業に勤めている労働者や自営業者が対象 |
保険料の負担 | 個人が負担 | 企業が一部、労働者や自営業者が一部負担 |
保険料の算定方法 | 年収に応じて決まる | 給与額に応じて決まる |
保障内容 | 医療費補助、高額療養費制度の利用など | 介護保険、労災保険などの特殊な保険制度がある |
加入手続き | 市区町村役場で手続きをする | 企業に勤める場合は会社が手続きをする、自営業者は社会保険事務所に手続きをする |
※上記は一般的な違いです。詳細は各自治体や保険種別によって異なる場合があります。
国民健康保険と社会保険、どちらに加入すべきか?
国民健康保険のメリットとデメリット
【メリット】
- 自営業者や失業者など、社会保険に加入できない人でも加入できる。
- 保険料が社会保険に比べて安く、負担が軽い。
- 高額療養費制度があり、重い病気にかかった場合の自己負担額を軽減できる。
- 医療費の補助があるため、生活に余裕がない人でも医療を受けやすい。
【デメリット】
- 自分で手続きをしなければならないことが多く、手間がかかる。
- 医療機関の自由診療が制限される場合がある。
- 地域によって保険料や支払い方法が異なるため、混乱することがある。
社会保険のメリットとデメリット
【メリット】
- 勤務先で加入しているため、手続きが簡単で面倒が少ない。
- 医療機関の自由診療が可能で、自分の希望する医療を受けることができる。
- 介護保険や労災保険などの特殊な保険制度があるため、万が一の場合でも補償が受けられる。
【デメリット】
- 保険料が国民健康保険に比べて高いため、負担が大きい。
- 勤務先で加入しているため、転職した場合に手続きが必要になる。
- 自営業者や失業者など、加入できない人がいるため、全ての人にとって適した制度ではない。
国民健康保険 | 社会保険 | |
---|---|---|
メリット | – 保険料が低い – 自由度が高い – 住民税が安くなる – 手続きが簡単 | – 全国どこでも加入可能 – 労働災害や病気で働けなくなった場合の補償がある – 被扶養者や扶養家族も加入可能 |
デメリット | – 非正規雇用者は加入ができない – 自己負担金が高い – 高額療養費制度が利用しづらい | – 保険料が高い – 加入企業の規模によって待遇が異なる – 転職時に手続きが煩雑 |
国民健康保険と社会保険の選び方のポイントと注意点
国民健康保険と社会保険は、それぞれ加入する人の状況によって適した保険制度が異なります。以下では、どちらに加入すべきかを考える上でのポイントを解説します。
【加入資格の確認】
国民健康保険は、自営業者や無職の方、企業に勤めているが所得が低い方などが加入することができます。一方、社会保険は、企業に勤めている方が加入することができます。加入資格を確認し、自分に合った保険に加入することが大切です。
以下に、国民健康保険と社会保険の加入資格の違いを表にまとめました。
国民健康保険 | 社会保険 | |
---|---|---|
加入対象 | 自営業者、農林漁業者、無職者、パート・アルバイトなど一定の条件を満たす人 | 企業に勤める労働者、事業主、公務員など一定の条件を満たす人 |
所得制限 | 無し | 月収20万円以上の人は加入必須 |
年齢制限 | 無し | 20歳以上の人は加入必須(一部の特例あり) |
家族の加入について | 配偶者や子どもなど、同居している家族が加入することができる | 配偶者や子どもなど、同居している家族が加入することができる。但し、加入条件が異なる場合がある |
地域限定の場合がある | 一部の自治体で加入が必須となっている場合がある | 無し |
注意:上記の表はあくまでも一般的な基準であり、具体的な加入資格や条件は市町村や企業によって異なる場合があります。
【受給内容の確認】
国民健康保険と社会保険は、保障内容に違いがあります。国民健康保険は、医療費の補助や高額療養費制度の利用などがあります。一方、社会保険には、介護保険や労災保険などの特殊な保険制度があります。自分が必要とする保障内容を確認し、加入する保険を選ぶことが大切です。
以下に国民健康保険と社会保険の受給内容の違いを表にまとめました。
受給内容 | 国民健康保険 | 社会保険 |
---|---|---|
医療費補助 | ○ | ○ |
高額療養費制度 | ○ | × |
介護保険 | × | ○ |
労災保険 | × | ○ |
雇用保険 | × | ○ |
厚生年金保険 | × | ○ |
国民健康保険では、医療費の補助や高額療養費制度がありますが、社会保険には介護保険や労災保険、雇用保険、厚生年金保険などの特殊な保険制度があります。自分が必要とする保障内容を確認し、選択することが重要です。
【組合の比較】
国民健康保険や社会保険には、複数の組合が存在します。加入する組合によって、保険料や受給内容が異なる場合があります。自分に合った組合を比較し、加入する組合を選ぶことが大切です。
【地域の特性に合わせた選択】
国民健康保険や社会保険は、地域によって加入できる保険が異なる場合があります。また、地域によっては国民健康保険よりも社会保険の方が加入しやすい場合もあります。地域の特性に合わせて保険を選ぶことが大切です。
まとめ
国民健康保険と社会保険は、どちらも重要な保険制度です。自分に合った保険制度を選択することで、必要な保障を受けることができます。加入する際には、それぞれの特徴や保障内容をしっかりと把握し、比較検討することが大切です。
また、保険制度は法律や政策の変更により、変更される場合があります。最新情報を入手するためには、市町村役場や保険者のウェブサイトをチェックすることをおすすめします。
保険制度の選択は、自分自身の将来を考える上で非常に重要な決断です。十分な情報を収集し、慎重に検討した上で、自分に合った保険制度に加入することをお勧めします。